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同居しているカニ様の記録だったりあれこれ

起源への問い

2020年2月16日:Kavli IPMU/ELSI/IRCN 合同一般講演会「起源への問い」(岡ノ谷一夫連携研究者登壇)
行ってきました。
Kavli IPMUは宇宙論の研究をしているので以前からチェックしていたのですが告知を見て即決で申し込んだら当選しました。とても面白い講演会で大満足です。毎年やっているようなので来年も行こうと思います。

 岡ノ谷さんの『心の誕生』では動物に心(主観的体験)はあるか?というテーマで過去に行われた実験がいくつか紹介されました。かつてグリフィンという学者が「心を使って説明した方が単純になるのなら、心があると言っていいのではないか」というようなことを言ったそうです。その考えに沿った心がありそうに”見える”実験です。
 ネズミが時間を測ることができるとか、磁石の特徴(くっつく)を理解して効率的に2つのものを運ぼうとする結果が興味深かったです。メタ認知様行動*1の観察は実験の設定が非常に巧みで、自分の記憶に確信を持っているかどうかをラットに申告させることができるとは驚きました。
 しかし、それでも動物に心があるかどうかはわからない。人間同士でも相手が主観的体験をしているかどうかわからないのだから当然ですね。人間が主観的体験をしていることは、構造が大体一緒だからそうだろうと推測できるだけで。心がありそうな行動をとることはできるが主観はない状態を哲学的ゾンビといいます(久しぶりに聞いたこれ)
 個人的には、「意識というものを不思議に思い、その疑問を自らの言葉で口にすることができる」ならばかなりの高確率で主観的体験があると言える気がします。逆は言えないですね。心はあるけど不思議に思わない人というのは普通にいると思うので。

 松本さんの『創世の科学と暗黒物質は大変勢いがあり面白かったです。勢いがありすぎて一部聞き取れませんでした。光その他物質のもととなるものの誕生を「エントロピーの起源」と言っていたのが気になっています。自分のエントロピーの認識がずれていたかもしれません。やはりまだまだ体系的に学んでいないものには理解が程遠いですね。
 ダークマターの量子辺りの質量はまだわかっていないそうです。ダークマターを観測しようとする実験には種類があって、それは予測している質量に対応しているとか。伝統的な候補である10^-25程度だった場合を想定すると、カミオカンデのように地球をすり抜けようとするダークマターの衝突をとらえようとする、もしくは加速器を使うことになり、それより重かったら対消滅時のガンマ線を、さらに重かったら重力レンズ効果を……逆に軽すぎる場合は光時計のズレを見るそうです。

 中川さんの安定同位体で探る分子・生物・生態系の起源』は思ってたよりだいぶ化学寄りの話だったので頭が追い付いてなかったです。光合成に種類があり、元々は酸素を伴わない光合成が主流の活動だったというのが面白いです。てっきり光合成の登場と酸素供給は同時だと思っていました。酸素関係ない光合成はエネルギー効率が悪いので今のような大きな生物は現れなかっただろう、とのこと。


 一般向け講演会ということでだいぶかみ砕いて解説してくださってる感じはありましたが、それでもまだまだ知らないことがあるのでワクワクします。さらに突っ込んだ話を理解できるように今後も勉強していきたい。

*1:自分自身の頭の中を認識する